僕は2013年に日本で資格を取得してから今まで日本、マレーシア、ニュージーランドと3ヶ国で鍼灸をしてきました。
まだまだ鍼灸と関わる人生を歩き初めたばかりの新参者ですが、鍼灸の魅力って本当に底が見えないなぁと思います。
もちろんこの世にある全てのプロッフェッションって奥が深く、一筋縄ではいかないものばかりです(だからやってて楽しいんですよね)。
そのプロッフェッションの中でも鍼灸はトップクラスで奥が深いものだと僕は思っています。もっとも僕は鍼灸を専門にやっていて、それ以外の専門には携わったことはないので比較はできませんが。
でも今日はなぜ僕が鍼灸はそれほどまで深いと思うのか書いていきたいと思います。
そして鍼灸のことを今までよく知らなかったという人も、なるほどなぁ。鍼灸ってこう言うものなんだーとちょっとでも思っていただければ嬉しいです。
そもそも鍼灸って何なんでしょうか?
皆さんが考える鍼灸のイメージって、
- 鍼を体に刺したり、灸を燃やしたりする
- 痛そうだけど実は痛くないらしい
- 達人になると仙人みたいな人がいる etc..
とかまぁこんなところじゃないでしょうか。
むしろ別に鍼灸のことを調べていなくてこれだけ知っていたら十分です笑
そして上に挙げた鍼灸のイメージも全部その通りだと思います笑
鍼灸師だと人に言うとよく聞かれる質問があります。
”体に針とか刺してどうやって治るの?”
この質問、何気なく聞いてくる方が大半だと思いますがかなり的を得たいい質問なんですよ。
大体の鍼灸師さんはこんな感じで答えます。
- 鍼を身体に刺すことで物理的刺激を与えます。それに反応して血流や鎮痛物質が患部に行き届いて痛みを抑えられます。
- もし炎症とかが起こっていれば逆に周りに刺激を与えて血流を散らして炎症を抑えます。
- 固まった筋肉に鍼を刺せばほぐれます。マッサージでもほぐれますが鍼は表面からじゃ届かない深い筋肉にも届きます。
と、まぁ大体こんな感じです。
これは本当なんですよ。鍼灸とはどうやって作用するか調べるとこのようにずらーっと出てきます。
でも本当の正解はもっとシンプルで、僕は
”分からない”
だと思っています。
鍼灸という専門の道に生きて食べているにも関わらず僕は何で鍼灸が効いているかなんてわかりません。笑
でももちろん考えなしに適当に鍼を刺しているわけではなく、自分なりの考え、そして自信を持って治療を行っていますよ。
ただメカニズムが分からないことだらけなんです。
だから面白いんです。深いんです。
じゃあ勉強したらわかるのでしょうか。
世界中の学者を集めて鍼灸を研究したらなぜ効くかぐらいはわかりそうですよね。
いえ、無理です。
難しいとか不可能に近いとかじゃありません。不可能です。
これから科学が発展していっても、何世紀過ぎてもダメです。というかその前に人類かこの星が滅んじゃいます。笑
なんで不可能かというと、自分たちが相手にしているのは人体だからです。
人の体って自然から生まれたものですよね。
機械やコンピュータと違い、人間の手によって生まれたものではないので人間の物差しで考えて人体の全てを判断するのは不可能なんです。
そんなことを言うと、現代医学の発展でどんどん人体の仕組みや構造、そして病気のメカニズムや新しい治療法とかが見つかってきている。そう思う方も多いと思います。
そして現に医師も人体を相手に治療を行っています。
ここに二つの医療の考え方の違いが出てきます。
一般の病院で医師が行っている現代(西洋)医学では、科学や実験で得た根拠を元に人体や病気の原因を解析し、それに対しての処置を行います。
一方、鍼灸師が行っている東洋医学では人体は自然の一部とされ、人体を取り巻く周りの環境を含めた上で病の原因を考え、それに対して治療を行っていきます。
この決定的な違い、わかりますか?
現代医学では一人の人間の身体は自然とは別にある一つの仕組みだと考えられているのに対し、東洋医学では人は自然と共に生きており常に影響し合っていると考えられています。
つまり東洋医学で治療の根拠を提示するということは、この世の全ての自然を解明しないことには不可能ということになります。
この世の自然って何も地球上だけではないです。自分たちは空を介して何の隔たりもなく今でも宇宙空間にいます。
宇宙空間や素粒子レベルの物質なんて僕たち人類とは一つ次元が違う世界です。でも確かに別次元のそんな世界が僕たちの周りには存在しているのでそこを無視することはできません。
そんなアインシュタインの数式上でしか証明できておらず、この目で確認しようがないものを研究して医療に適応できているか証明するなんてできると思いますか?
はい、だから無理なんですよ。
鍼灸の世界ってそんななんです。こんな世界だと達人になると仙人みたいな人が増えるってのも納得なんですよ笑
上の例に書いた血流を促すとか、発痛物質を抑えるといった鍼灸のメカニズムとは現代医学の考えの鍼灸理論なんですね。
鍼灸の学校ではこのメカニズムで習います。鍼灸はこうやって効くんだよって。なぜならそっちの方がシンプルだから。
学校なのに鍼灸の効く理由はわかりませんなんて言えないですし笑
今ではこんな東洋医学派な僕ですが、実は学生時代、東洋理論が苦手でした。鍼灸師を目指してたくせに。
言っていることが訳がわからなかったんですよ。人体は自然と一体となっているとか、感情とリンクしてるとか、気が巡ってるとか。目に見えるものではないですし。
そして好きだった科目は、生理学とか病理学、臨床医学とかでした。
鍼灸師の国家試験も生理学とかは満点でしたし、他も模試等の大体の点数は現代医学関連の科目から稼いでました。
僕は鍼灸師になるまで、そしてなってからも半年くらいはバリバリの現代医学派人間だったんですよ笑
でも今は修行してしっかりと東洋医学についてもっと知ることができました。そして今になって比べてみると思います。
現代医学よりも東洋医学の方が複雑なんだ。
現代医学ははっきりと体系化されててとっつきやすい。だから一般の人にも受け入れられ易い。
対して東洋医学は現代医学に対して目で見て理解できるものではないし、診断から治療まで明確に体系化されているわけではないので理解していくのは難しい。
僕は鍼灸師である以上、東洋医学に誇りを持って自分なりの研究を重ねていきたいなと思っています。そして自分の経験から自分なりの東洋医学論を考えていこうと思っています。
鍼灸とか東洋医学で”気”という言葉が多々出てきます。そんな話になると、なにかスピリチュアルなものだったり、怪しい宗教的なものだと考えている人も多いですよね(特に日本人には本当に多い)
東洋医学は古臭い考えで現代医学が最先端だ、と考える人も多い。
自分は東洋医学の考えを持っている今でも特に信仰している宗教とかはありません。日本文化に染まった自分は仏教か神道かもわからないです。
でも今になって思うんですよ。
現代医学は間違いないと理由なく盲信しておきながら、東洋医学はなにか胡散臭いと理由なく否定している人たちの方がよっぽど宗教じみてる。
鍼灸は日本の立派な伝統医学です。
人類の長い歴史と知識が詰まっています。
科学が進むにつれ、現代医学が東洋医学に寄って行ってる面も多々あります。その為今日では欧州などでは東洋医学への注目が高まっています。
東洋医学が本当に意味や価値のないものであればとうの昔に滅びています。
今の医療とは何なのか、
私たちが当たり前に耳にする医学というものがいかにして生まれてきたのか、
そんなこともたまには考えてみると色々と発見があるかもしれません。
最後少し脱線したかな。
長々と書いてしまいましたがこれを読んで少しでも鍼灸や東洋医学に興味を持っていただけたら嬉しいです。