過去の記事で書いた通り僕は鍼灸治療の際には間中式を好んで用います。
特に内科系を含む治療の時にはよく使います。
間中式は簡単に言えば、
奇形八脈を用いて電子を動かしてバランスを整えよう
という治療法です。
今回はその電子を動かす際に使う間中式の特徴とも言えるデバイス、
イオンパンピングコード(iPC)とエレクトロスタティック・アブゾーバー(EA)についての紹介です。
以前に書いた間中式の記事はこちら。

人体に 極性を持たせて電子を動かす
前回の記事に書いた通り、鍼や灸は経絡に影響を与えるため電子を動かしますが、
間中善雄は身体に極性を作ることでさらに電子が動くと考えていました。
経絡とは電子(もしくは気)が身体中を走り回る回路のようなものです。
経絡に滞りがあるのならそこに極性を与えて電子の流れを促すことで経絡の巡りを良くしようと考えることができます。
その考えの代表的なものが2-M-Cです。
2-M-Cは2-Metal-Contact(二つの金属の接触)の略称ですが、日本で似ているものに”11円療法”と呼ばれるものがあります。
これは10円玉と1円玉の二つの硬貨を用いたものなので11円療法なのですが、
10円は銅、1円はアルミニウムでできています。
この金属の材質の違いによって人体に及ぼす影響が変わってきます。
これは各金属原子の電子の動き(酸化還元反応の起こりやすさ)を表すイオン化傾向の違いによるものだと考えられます。
二つの金属に電位差が発生する事例として、実際に1円と10円を使って電池を作ることも可能です。
硬貨一枚だけでは電位差は小さいため、数枚使う必要がありますが。
2-M-Cで間中善雄は銅と亜鉛、そして金と銀のペアで極性を作って用いていました。
しかし先ほど書いた通り、二つの金属の電位差は簡単な電池も作れないほど微弱なものです。
これで本当に効果など感じることはできるのでしょうか。
実際にやってみると分かりますが、皮膚に10円と1円玉を置いたところで特に何も感じないと思います。
それでも正確な位置に正確に置いてあれば、脈やお腹など様々な所見が変化しています。
繊細な人であれば、皮膚にピリピリとした感覚を覚えることもあります。
このように電位の違いから金属を用いて身体に極性を作り、実験を繰り返した間中善雄ですが、
原子レベルの電子の動きが全身に及ぼした数値を特定するほど精密な機器は限られているので数値として特定することは困難でした。
しかし所見は確かに法則を持って変わっており、例えばコインを置く位置を逆にすれば症状が悪化するなどの例も実験済みです。
中医学では経絡に影響を与えるために”響き”の感覚が重要だと考えられていますが、このように何も感じない刺激で変化が大きく出ます。
ゆえにこの繋がりを間中善雄は”経絡”ではなく
まだx(不明)なシステム、“X-signal system”と呼びました。
Xシグナルシステムをより効率よく活用するために患者は治療の際には身体に接触する全ての金属や電子機器を外す必要があります。
最大限に効果を出すには絶縁ベッドで治療することが好ましいのでベッドの見た目を気にしなくていい実験などの時は電位を遮断するゴムシートのようなものの上でやって見ると効果は見えやすいかもしれません。
このXシグナルシステムを用いて電子を動かさんとする研究では金属の電位差の他に
二つの経穴に外から繋がりを作って動きを出すという方法も用いられました。
その繋がりを作る器具として現代に残っているのが
イオンパンピングコードとエレクトロスタティックアブゾーバー、
電子イオンビームなどです。
電子イオンビーム(Ion beam device)は旭物療器研究所から製造・販売されていた機器ですが、
問い合わせたところ6・7年前から製造を中止してしまったようですので現在では入手が困難になっています。
なので僕は持っていませんが、使用した感じから非常に使い勝手がいいため、どうにか自ら開発できないかと考えているところです笑
(機械に詳しい方がいましたらご協力いただけると助かります笑)
以上を踏まえた上でここから間中式で僕が日常から使っている
イオンパンピングコードとエレクトロスタティックアブゾーバーについて書いていきます。
イオンパンピングコード(iPC)
まずは最も幅広く使われていると思われるイオンパンピングコードです。
Ion Pumping Cordでは長いので、略してIPCと言ったりもします。
通常はIPCでいいですが、この記事ではある深い理由がありiPCと、iを小文字で書いています。
勘の鋭い方なら理由はわかると思います。
全て大文字で書くよりもiが小文字の方がかっこいいからです。笑
iMacから始まり、iPod、iPhoneなどと小文字のiが広く普及すると同時に、小文字のiがスタイリッシュなデザインと認知され始めました。
山中伸弥教授がiPS細胞に小文字のiを使った理由もそのブームが影響しています。
僕はカルテに書くときは普通に大文字で書いていますが、どうせ記事に書くんだったら流行りに乗っかろうという魂胆です。
小文字のiブームの火付け役、AppleはもうHomePodなどでiのつかない最新機種を始めているのでぶっちゃけ流行りに乗るのがかなり遅いですが、まぁどうでもいいです。
皆さんはIPCでもiPCでも好きに書いてください。
(でも小文字の方がかっこいいと思う同志は是非iPCでいきましょう笑)
さて、本題です。
イオンパンピングコードはその名の通り、”イオンを動かすコード”です。
一見するとサイズの小さい車のブースターケーブルのようですが、働きもそれに近いです。
手足に打った二本の鍼をつなぎ合わせて流れを作ります。
この時の鍼はXシグナルシステムと同様なので響きの感覚を伴っていけません。
なので鍼は切皮程度(2-3mm)の深さに留めることが重要です。
コード自体は銅線でできており、二つのクリップの間にゲルマニウムダイオードが入っています。
ダイオードには順方向作用があるため一方行にのみ電子は動きます。
またダイオードには検波作用もあり、ラジオの電波を読み取る時などに使用されます。
特にゲルマニウムダイオードは順方向電圧と言われる電位が発生する最小の電圧が低いため、周りの磁気とよく反応します。
xシグナルシステムに効果を表すような微弱な電位でいいのなら、地球の磁力である地磁気と反応して経絡内に流れを生み出すことも可能です。
地球の磁場の影響で電子の動きはより活発になります。
実際に磁力を遮断するバリアの中で実験を行なったところ、iPCによる電位の動きは少なくなったという研究もあります。
イオンパンピングと言ってもイオン自体がコード内を動くわけではなく、
陰極である黒のクリップと陽極である赤のクリップの間を電子が動きます。
負の電荷は赤から黒のクリップへ、正の電荷は黒から赤へ移動します。
またコードだけではなく二本の鍼の間の表皮と体組織、間質液を通して電位が流れるため、
コードと体内を通る一つの回路が形成されることになります。
これにより電子が過少になっている部分と過多になっている部分のバランスを整えられるため、本治法として活用することができます。
iPCにより身体の中を電位が動くような感覚は繊細でない限りあまり感じられません。
しかしコードを繋ぐと同時に不思議とリラックスできるというのもiPCの一つの特徴で、
これは僕の経験上多くの患者が感じることができます。
エレクトロスタティック・アブゾーバー(EA)
次はエレクトロスタティック・アブゾーバーです。
iPCや電子イオンビームよりも歴史が短く、最も最近発明された機器です。
いきなりエレクトロスタティック・アブゾーバーと言われてぴんと来た人は
かなりの英語熟練者ではないかと思います。笑
とにかく名前が長い。
これ実は日本語ではいくら探しても情報が出て来ないんですよね。
なのでどう言うべきかわからないので英語での呼び名をそのままカタカナにしたらこんなに長い名前になってしまいました。笑
ここは略称でいきましょう。
EAです。ETみたいなノリでゴロがいいですね。
iPCと違い、これに関しては全て大文字でも構いません。むしろ大文字でお願いしたいです。
英語表記ではElectrostatic Absorberです。
Electrostaticは静電気、Absorberとは吸収する物(緩衝器)のことです。
器具の性質を知ればなぜこのような名前なのかわかります。
使い方としてはiPCとそこまで大きな差はありません。
構造もダイオードが組み込まれることによって電子を一方向に動かしますし、iPCと同じように切診を行い、同じように取穴します。
最も大きな違いは鍼を介する必要がないということです。
なので子どもや、鍼が苦手な患者などにはかなり喜ばれます。
最初の章で話した通り、皮膚に金属を接触するだけで電位差を用いることができるため、
電子を動かすために皮膚に鍼を刺すことは必須ではありません。
”静電気”の名がつく通り、EAは体細胞の中に溜まっている静止電圧を体表に汲み上げて吸収して流れを作り出します。
”静電気吸収者”の名にふさわしい働きです。
電子を表皮に組み上げるためかEAを使うとiPCを使った時よりも、ピリピリやジワジワとした感覚が伴うことが多いため、たまに患者からなんか電気が動いてる感じがすると言われることがあります。
電気の感じと言っても不愉快な感覚ではないのでそれを面白がって受ける子どももいます。
動く感覚はしてもiPCと比べると電子を動かすための力はやや劣ります。
なのでiPCだと強すぎてしまう繊細な患者にはEAを用いた方が安全です。
EAだと鍼を刺す必要がないため、治療を素早く行う必要がでた際にはEAを使うことで圧倒的に時間の短縮ができます。
また衛生上も鍼を刺さなければリスクは少ないため、クリニック以外の場所でも使いやすいです。
以上の二つが間中式治療の際に使う主な器具です。
似たような物ですがそれぞれに違った長所があります。
それに口じゃなかなか説明できませんが、毎日使っていると感覚的に
あ、この人はiPCだなとか、これはEAの方が変化が出やすそうとか、
なんとなくですが徐々にわかってきます。
インスピレーションといいますか、、
多分治療家であればこの感覚なんとなくわかりますよね。
終わりに
今回はざっと間中式の際に使う器具について書いていきました。
ここで疑問が出るかもしれません。
この器具がなければ間中式は実践できないのか?
そんなことはありません。
先ほど話した通り、電子を動かすのは1円玉と10円玉があればできます。
また少しお高くなりますが、銀鍼と金鍼を使えばそれでも十分極性を持たせることができます。
しかしこれらを用いるには
Xシグナルシステムの理解と診断法、
経穴の選び方と電子を動かす方向性を知る必要があります。
これらについても長くなるので、後々記事にしていく予定です。
参考:
Yoshio Manaka・Kazuko Itaya・Stephen Birch(1995) 『Chasing the Dragon’s Tail: The Theory and Practice of Acupuncture in the Work of Yoshio Manaka』 Paradigm Publication.
傳田光博(2005) 『皮膚は考える』 岩波書店.
間中善雄(1971) 『針灸の理論と考え方』 創元医学新書.
今晩は。お久し振りです。前に質問させて頂いた者ですが、質問よろしいですか?鍼灸の事を色々調べていたら刺絡に興味をもちました。しかし、血を出すので医者じゃないと出来ないと書いてあったのですが鍼灸師でもこれは出来るのでしょうか?
ヌーボーさん、お久し振りです。
瀉血は歴史のある治療法でもともと鍼灸師が行なっていましたが、現在の日本の法律では医療目的で患者から血液を出すことは医師以外は禁じられています。
なので僕の知り得る限りでは”合法的には”不可能です。もしかしたら医師の監修の元などでは例外は存在するかも知れませんが。
ニュージーを含め、今まで僕がいた国はどこも瀉血が可能なのでよく使います。非常に効果的です。
これから海外を目指されるのであれば覚えておいても損はないはずですよ!
お返事ありがとうございますm(__)mやはり鍼灸師でも駄目なのですね(T_T)色々調べて見たのですがメディカルカッピング・瀉血とは言わず刺絡と言えば大丈夫?瀉血と刺絡は全く別物であり東洋医学的にみていて伝統的な鍼灸だから出来ると意見も書いていて、どっち何だろう?と思いました。(T_T)
瀉血や刺絡の違いなどは解釈の問題であり、長い歴史がある故に曖昧な所があります。ゆえにその点も法律のグレーな部分であり、法律の専門外である僕からyesかnoと言うことはできません。
ただ言える事は言い方や捉え方によって違法性を含む以上、トラブルを避ける上で僕だったら日本では使いませんし、オススメも致しません。
グレーゾーンなんですね……。海外だと出来るですね!日本だとお医者さん以外だと中々許されている事が少ないですよね……。漢方薬とかもそうですよね。ありがとうございました。後、学校選び終わりました。その前に別のテストを受けないといけないので頑張ります!
EA、欲しいです。どのようにしたら、入手できますでしょうか?
上條 浩明さん、コメントありがとうございます。
イオンパンピング自体はiPCが主流なため、EAは少しだけ入手しずらい状態にあると思います。僕は三年前にジャカルタのイオンパンピングワークショップの時に現地の鍼灸師の方から購入しました。
元々は日本発祥の技術ですが海外の方で人気が高いため、EAの入手は海外の方がしやすい状態にあるのかもしれません。
一応僕が知っているイオンパンピングの器具を扱っているお店”三景”を紹介します。
http://oq83.jp/indexJP.php
三景の方は国外問わずいろんな鍼灸師と交流があるためどこから入手できるかは僕よりも詳しいかと存じます。かなり親切に対応してくれると思うのでぜひ問い合わせてみてください!