古くから伝統医療が大きく発展して来た国の一つである日本。
鍼灸師の数も多く、たくさんのクリニックが日本中に存在しています。
しかしながら現在の日本では
鍼灸は昔の技術で、古いものというように捉えられています。
そのため日本国内での鍼灸師の立ち位置はあまり大きいものではなく、
国民からのニーズも残念ながらそこまで多くないのが現状です。
昔の記事にも書いた通り、
だからこそ僕はやるなら日本国外で鍼灸をしようと思いました。

では日本と比べてニュージーランドでは
鍼灸師はどのような立ち位置になるのでしょうか。
NZとマレーシア以外では鍼灸はしたことがないので他の国のことは詳しくはわかりませんが
日本と比べて思うことを書いていきたいと思います。
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ACCがもたらすNZの特殊な医療形態
まず結論から言うとニュージーランドでは日本に比べ、
鍼灸師はかなり大きく貢献することになります。
理由はNZの医療制度の中に鍼灸がしっかりと含まれているからです。
ニュージーの医療には他の国にはない特徴があります。
ACC(Accident Compensation Corporation)の存在です。
ACCとはアクシデントで起こった怪我なら
国が医療費を保証するという制度です。
国民でも、外国人でも、観光客でも関係なく、
NZ国内で起こった怪我なら全てカバーされます。
鍼灸も政府から医療効果があると認められているため、ACCの保証対象です。
その為、多くの患者が鍼灸を受けにクリニックに足を運びます。
ニュージーではフィジオセラピスト(理学療法士)の存在も大きいです。
NZの患者は怪我をした際には、 フィジオや鍼灸を受けて怪我が治るまでのサポートを安心して受けることができるのです。
僕が今いるクリニックもフィジオと鍼灸が混合するクリニックです。
ACCの患者は多くがフィジオを受けて、その後に鍼灸を受けますが、
もちろん患者のリクエストによってはフィジオだけだったり、鍼灸だけの時もあります。
鍼灸師はフィジオと患者の状態を共有しながら治療します。
なので所見テストや、超音波、MRIなどの結果がある程度判明した状態で治療に臨むことができます。
注意点はACCがカバーするは基本的に外傷の治療のみなので、
もしもインターナル(内科系)の治療を行いたければ患者はプライベートで治療を受ける必要があります。
まぁ実質的には外傷があればインターナルの調整も大事になってくるので、
内科系の治療をしてもあまり問題にはなりませんが。
先日僕の師匠の師匠がNZに公演に来られました。
イギリス出身で様々な場所で鍼灸に携わっている彼も、ACCに関しては“Impressive!“と言っていました笑
彼曰く、ヨーロッパやアメリカなどでは鍼灸を受けにくる患者はインターナル治療がほとんどです。
NZではインターナルの治療にくる患者も多いですが、上に書いた通り外傷の治療に対してくる患者も多いです。
だからこそNZでは鍼灸師は重要な役割を担うことになるのです。
医師も患者に鍼灸を勧める
日本では医師から患者に対して鍼灸を受ける様にアドバイスされることは稀です。
日本の医師の多くが鍼灸という古い技術に興味も持っていないからです。
しかしNZでは患者が医師から言われて鍼灸にくることも少なくはありません。
2006年のNZの医師(General Practitioner)を対象としたアンケートでは
全体の86%が鍼灸は有効だと認識しており、80%が実際に患者に鍼灸を勧めているそうです。
鍼灸の理解度は年々増していっているので、今ではもっと数は増えているはずです。
僕の患者にも病院に勤務する医療従事者が多くいますが、
その多くが鍼灸に対しての理解度が高く、日本の認識だと驚きます笑
現代医学から離れて、気や経絡の説明をしてもかなりの興味を示すので、
解剖学や生理学に詳しい分、一般人よりも話がはずむことが多いです。
こっちで働いていると西洋医学や東洋医学が、お互い無駄な偏見なしにうまく共存し合っているなぁと感じます。
病院を頼りすぎない国民
NZの病院関連でよく聞く話は、
医者に会うのに何時間も待たされるということはザラだということです。
NZではACCのおかげで患者は出費ゼロでGPという総合的な医師に診てもらうことができます。
そのため、患者もあまり症状がひどくなくても気軽に病院に行くことができます。
しかし治療を受ける順番は状態が危ない人が優先されるので、
軽い症状だと後回しにされてしまうのです。
長く待ってようやく医師に会っても、
痛み止めをもらって、安静にしてと言われるだけということも少なくありません。
薬は飲みたくないから飲まないという人も多くいるので、
そんな人は病院に行く価値はほぼない様なものです。
重篤な病態は病院で診てもらい、
それ以外は病院ではなく他の医療機関に一任しているということです。
日本人にはそれはNZの病院の体制が整っていないからと考える人が多いですが、
逆に日本を良く知る外国人の友人には日本人は皆保険で病院に頼りすぎて薬漬けになっているという認識の方が多いです。
僕も日本に住んでた時から病院にはいかなかったので後者側の認識です。
不必要なものは極力しないのが医療です。
患者がすぐに薬に頼ることは医療の本質とは真逆の考えです。
まぁそれは国民の認識から起こるものなので甲乙はつけがたいです。
でもいつかその様な話題についても詳しく書いて行きたいと思っています。
終わりに
今回は鍼灸師はニュージーランドでどの様な社会的役割を担っているのかということについて書いてきました。
ニュージーランドがACCで鍼灸に費やす費用は年間約2400万円で、
そこにプライベートも合わせると年間約7000万円です。
日本から考えると多くないと思われるかもしれませんが、ニュージーの人口は日本の24分の1です。
単純に24倍したらいくらになると思いますか?
16億8000万円です。
日本で鍼灸師に対してこの様な扱いがあるなどと考えられますか?
国や国民の鍼灸に対しての認識が全く違うと感じます。
先日、鍼灸協会から発行された鍼灸の年刊雑誌の表紙にデカデカと書いてありました。
”鍼灸がニュージーランドに来てから今年で40年!”
40年。。。
たったの40年です。
日本は鍼灸が来てから何百年経っていると思っているんですか?笑
国によって本気度が違うとこうやって差が出るものだとしみじみ感じます。
でも歴史は歴史です。
日本は代替医療が伸びない国というのは仕方がありません。
というわけで、結局はやはり海外に拠点を移して正解だったと日々思ってしまう次第です笑