デコヒーレンスはなぜ起こる?量子の”観察者効果”とは

 

量子デコヒーレンスは量子力学の最大の特徴と言える面白い現象です。

 

 

量子のデコヒーレンスとは

量子の非局所性や、重ね合わせ状態が崩壊して量子としての動きが失われることを言います。

 

そのデコヒーレンスを起こす要素として外からの観測が作用し、それによってデコヒーレンスが起こります。

”観測者効果(Observer Effect)”と呼ばれる現象です。

 

 

”誰にも見られてない時は波のように振る舞い、

観測者に見られていると粒子のように振る舞う。”

それが量子が持つ物理学的矛盾であり、20世紀初頭の物理学者が頭を悩ますことになった原因です。

 

 

ここで疑問が出てきます。

観測”とは一体何なのか。そして”観察者”とは何を指す言葉なのか。

観測者には認識が必要で、観測できるのは意識のある生物だけなのでしょうか?

 

この観察者について考えて行きますが、その前に少しだけ回り道をしてからこの疑問を見ていきましょう。

 

 

デコヒーレンスについては過去に何回か書いてきました。

量子もつれの記事でも触れていましたのでまだ読んでいない人は読んでみてください。

量子もつれ

 



量子デコヒーレンス

上に書いた通り、観測によって量子としての情報が失われてしまうことがデコヒーレンスですが、

量子力学とは数式上で成り立つものなので別の言い方をすれば”波動関数が一つの状態に収縮すること”を言います。

 

 

量子コヒーレントな状態とデコヒーレントは具体的に以下のように変化します。

 

コヒーレント…

量子的振る舞い、波動的な挙動(非局所性)、同時に二つ以上の状態をとる(重ね合わせ)

デコヒーレント…

古典物理学的振る舞い、粒子としての挙動(局所性)、取れる状態は一つのみ

 

 

この変化をうまく表したのは有名な二重スリット実験です。量子力学に興味がある方は聞いたことがあると思います。

 

波としての性質を見せていたはずの光子が、

光子の動きを捉える観測器をつけた時に粒子としての性質を持つことを説明した実験です。

(非常に面白い実験ですが長くなるのでこの記事では飛ばします。

興味ある方は調べてみてください。)

 

観測器を取り付けたことにより光子の動きに変化が現れたのでは、と言う予測もありましたが観測機を外さずにスイッチを切ればたちまち波としての性質に戻ります。

よって、観測という行為自体が光子に影響を与えているのだと考えられました。

 

 

二重スリット実験の話は飛ばしましたが、今から話すのは別の有名な話です。

これも興味のある方であれば聞いたことがあるはずです。

 

シュレディンガーの猫

”シュレディンガーの猫”は、オーストリアの物理学者であるエルヴィン・シュレディンガーが量子力学の考えを否定するために考えた思考実験です。

 

出典:www.askamathematician.com

 

密閉された箱の中に一匹の猫が入っており、

同じ箱に放射性物質ガイガーカウンター青酸ガス発生装置を入れます。

放射性物質から放射線が出るとガイガーカウンターが感知し、装置から青酸ガスが発生する仕組みです。

ガスが発生すると猫は死に、発生しなければ死にません

 

猫の命の鍵となる放射線は原子核の崩壊によって出ますが、原子核崩壊は量子のトンネル効果によって引き起こされます。

そして1時間の間に量子トンネルが起こる確率、つまり原子核の崩壊が起こる確率は完全に50%とします。

 

 

しかしそうなるとここでおかしなことが起こります。

 

量子のデコヒーレンスは観測という外部からの干渉がないと起らないため、50%の確率のどちらになるかは観測するまでわかりません。

言い方を変えると箱を開けた瞬間に観測され、量子の位置が確定されるということです。

 

つまり箱を開けるまでは量子は重ね合わせ状態であり、

”原子核崩壊が起こった状態”と”起こってない状態”も重ね合わせで存在し、

その結果、猫も観測されるまでは”生きている猫”と”死んでいる猫”の重ね合わせ状態にあるということになります。

 

”生きていながら死んでいる猫が存在するはずがない。

よって量子力学はありえない”

そうシュレディンガーは主張したのです。

 

(これが以前のデジャヴの記事で書いた異世界が生まれる”量子的決定”です。

いわゆる多元宇宙論では、これによって”猫が生きている未来”と”猫が死んでいる未来”の二つの世界に分かれると言われています)

デジャヴは異世界との交錯?

 

この”生死の曖昧な猫”によって量子力学の不当性を訴えたシュレディンガーですが、量子の奇妙な特性には疑いようがなく、皮肉にも量子力学を奇妙さを世に知らしめる話として出回ることとなりました。

 

誰も見ていない物体は曖昧になるのか?

ここでようやく量子に影響を及ぼす”観測者”の最初の疑問に帰ってきます。

 

観測者になり得るのは意識のある生物だけなのか。

犬や猫、鳥、魚、昆虫など、認識の度合いがわからない生物がそれを見た時でも

観測者効果は起こるものなのか。

そもそも観測とは”見ること”や”認識すること”なのか。

 

 

僕たちが触っている全ての物体、そして自分達自身も、

全て原子の集合体で、原子は紛れもなく量子によって作られています。

 

つまり観測していないときに曖昧な存在になるのが量子であれば、

自分たちが認識できるマクロな世界も同様の不確定性を持つことになります。

 

 

観測=見ることだと仮定すれば、夜空に浮かぶ月を地球上の誰も見なくなった途端に、

月の形や位置は曖昧になり、あらゆるところに存在するようになるということです。

 

部屋で一人で寝ている時には自分では認識できないため、

自分自身も曖昧な量子的存在でベッドに横になっているということにもなるかもしれません。

 

盲目の日本の鍼灸師が指先から気を感じ取りやすいのは、

患者を目で見ることができないゆえに患者の身体の量子的な部分に干渉しやすいということも考えられます。

 

このように見ること=観測という仮定がもしも本当であればアインシュタインが猛反対するのが頷けるほどに、

現実とは量子の気まぐれで存在するあやふやなものということになってしまいます。

 

 

”個人が見る事で現実が決められる”

そのような世界の根本からひっくり返すような無茶な理論が物理学者にすんなりと受け入れられるはずもありません。

 

観測者の謎が議論され始められてから長い間、何が”観測”となるのか指標がありませんでした。

今でも観測者効果については謎が多いです。

 

しかし遡ること約20年、観測を起こす新たな刺客が確認されました。

1996年、”観測者”の概念が変わった瞬間です。



”観測者”とは?

1996年、僕が5歳の時です。

フランスの物理学者セルジュ・アロシュと同僚らのリビジウム原子とマイクロ波を用いた実験において、

原子がその周囲と相互作用することによってデコヒーレンスが引き起こされるということが証明されました。

 

つまり”観測者”に知性がある必要などは全くなく、

他の粒子が作用するだけで十分な”観測”だったのです。

アロシュ氏はその研究によって、2012年にノーベル物理学賞を受賞しています。

 

 

これにより長きに渡る”シュレディンガーの猫”の謎にも決着が着きました。

箱の中身を誰かが観測せずとも、猫自身を構成する原子や、空気の原子、青酸ガスの原子などによって”観測”は引き起こされ、猫の生死の状態は即座に決定されることになります。

 

シュレディンガーの訴えは間違っていませんでした。

生きていながら死んでいる猫は存在せず、”観測”という認識の方に問題があったのです。

 

 

この世界は原子が乱雑した世界です。

空気中も、物体も、液体の中も原子や分子が休むことなく動き回っています。

 

量子がコヒーレントな性質を保ったまま原子が乱雑する世界を動き回れる時間は限りなく短くなります。

 

デコヒーレンスを食い止めるには今のところ、装置の中で原子の数を限りなく減らすか、

絶対零度まで温度を下げて原子の動きを止める必要がありあます。

 

量子コンピュータで量子ビットが重ね合わせを保つためにはデコヒーレンスを食い止める必要があります。

原子が乱雑するこの世界で量子コンピュータを開発するのが大変なのはそのためです。

 

 

 

観測者の正体は他でもなく他の原子からの干渉でした。

最後にそれを踏まえた上で観測という現象についてもう一度ライトを当てて、考えてみます。

 

”観測”とは高次元との接触

上に書いた通り観測者が何を示すのかは最近の研究でようやく明らかになりましたが、

観測が起こると同時に電子などの量子は動きを変えてしまうため、観測されていない時の本来の姿は未だわかっていません。

 

何が観測されるかという実験結果は説明できても、見えていない時に何が起こっているのかは知りようがありません。

確かめた瞬間に結果が変わってしまうからです。

 

これに関しては自分たちが認知できる次元を超えているため、そもそも理解をするのが不可能だと考える研究者が多くいます。

 

 

以上の結果から考えられる量子の“観測”とは言い方を変えると、

”高次元のものが僕たちのいる三次元へ接触すること”だと考えることができます。

 

僕たちは自分たちのいる三次元よりも高い次元については認識できません。

量子はもともと高次元の存在です。なので自分たちには認識できるはずがないのです。

 

”高次元の世界のほんの一部が僕たちのいる三次元に姿を表すこと”

それこそが観測の正体ではないでしょうか。

 

 

 

観測について考えるには時間の概念について考察する必要があると思っています。

 

時間とは過去から未来へ流れていくものという認識を持っている方が多いと思いますが

時間とは本来存在しておらず、三次元の僕たちが生み出す概念です。

よって”現在や過去、未来はこの世界に同時に存在しており、時間ではなく自分自身が時間軸を動いている”

という解釈を僕は持っています。

 

今まで過ぎ去った過去も消えるのではなく同じ世界に存在しており、

三次元の僕たちはそれを認知できないだけです。

 

 

昔人類が地球を中心に宇宙は回っているという勘違いしていたように

今のほとんどの人類も自分たちは不動で周りの時間が動いていると解釈をしています。

 

でもこれは自分が動いている感覚がないから起こる勘違いであって、

量子などの高次元な物質に対して自分たちが認識できる範囲がどれほど限られているかを考えれば低次元の僕たちを中心に世界が動くなんてことはありえません。

それは単なる人間の慢心だと思います。

 

 

当記事のサムネイルにはこの写真を使いましたが、この写真にはヒントがあります。

これは今年の5月にニュージーのテカポで撮影した夜空です。

 

カメラに詳しい方は知っている通り、夜空の星を綺麗に写すためにはシャッタースピードを遅くして、光をより長く取り込む必要があります。

 

教会の前に一本の白い帯がありますね。

これは30秒間シャッターを開いていたのでその30秒の間に懐中電灯を持って歩いたおじさんの形跡です。

(夜空を撮影中の写真家にとっては大迷惑ですが笑)

 

この写真は、おじさんが教会の前を横切る30秒間を一つの景色にまとめたものです。

教会の端からスタートした30秒前と逆側に辿り着いた30秒後が同時に存在しています。

つまり時間という概念がこの写真にはないのです。

 

 

ではこの場所で写真を撮影していた僕にはこの景色はどう見えていたでしょうか?

光の帯なんてもちろん見えていません。ただおじさんの右手にある光の点がゆっくりと30秒間動いていただけです。

 

30秒間の光の帯の全体像を知るには、この写真のように30秒間すべての光を同時に見る必要があります。

なので僕たちの現実では光の帯は見ることはできず、その瞬間の一点だけをみていることになります。

 

 

この一連は量子デコヒーレンスと似ています

過去と未来の全てが存在する次元に存在するのが量子であって、三次元の僕たちがそれを見ると点となってしまい見ることができない。

 

つまり”観測”の正体とは、

高い次元のものが僕たちのいる低い次元に下りてくる現象だと考えられるのではないでしょうか。

 

 

 

多くの学者が言う通り、量子の全体像を捉えることは不可能に近いと思っています。

次元を超えて量子の全体像を見るのは、過去と未来を同時に見るようなものだからです。

 

終わりに

今回はデコヒーレンスと”観測者”についてわかっている事と、

”観測”の正体とは何か少しだけ考察してみました。

 

しかし何度も言う通り僕は物理学者ではないので数式を理解して考察することはできません。

上には量子の全体像を知るのは難しいと書いていますが、

それを知るための方程式の鍵が発見されるかもしれません。

 

 

今のところ量子の動きを知るには、波動関数を使って

デコヒーレンスが起こった時にどの位置に出現するか予測することしかできません。

つまり僕たちの次元に入ってくる時でないと理解ができないということです。

 

人類が量子の全体像をある程度把握できるようになるとは、

高次元の物体をある認識できるようになるということです。

そうなると世界の概念が覆るのは間違いないと思います。

まだまだ世界はわからない事だらけです。

 

非常に長い記事になりました。笑

最後まで楽しんで読んでいただけたのなら幸いです

 

参考:

・ジム・アル=カリーリ/ジンジョー・マクファーデン(2015) 『量子力学で生命の謎を解く』SB Creative.

・佐藤勝彦(2006) 『[図解]相対性理論と量子論』PHP研究所.

・スチュアート・クラーク(2014) 『THE BIG QUESTIONS Universe ビッグクエスチョンズ 宇宙』Discover.





この記事が気に入ったら
いいね!

「デコヒーレンスはなぜ起こる?量子の”観察者効果”とは」への12件のフィードバック

  1. スペイン在住です。引き寄せの法則から量子の世界に興味を持ちました。大変興味深く読みました。大変な力作ブログですね。これからも訪問します。

    ご活躍を期待しています。

    1. トン吉さん、コメントありがとうございます!
      スペイン行ってみたいですね〜。量子力学は調べても調べても人智が及ばない分野なのでだからこそ面白いですよね。
      これからもちょくちょく見て行ってください

  2. ピンバック: 【追悼上映】樹木希林ラスト主演映画『あん』で描かれた、働くコトと生きるコト | Palary

  3. 色彩の研究をしている者です。
    量子、干渉で検索し、このサイトを見つけました。

    仰られている「人類が量子の全体像をある程度把握できるようになるとは、高次元の物体をある認識できるようになるということです。
    そうなると世界の概念が覆るのは間違いないと思います。」

    その通りだと実感しています。また、別の研究ですが、祈りの言葉と言うものが、人間の勝手な願い事と他人への感謝であったり、人類の平和を願ったりする言葉では、全く違う領域へ達するようです。
    これからも、ちょくちょくお尋ねします。

    1. maxmonaさん、コメントありがとうございます!

      色彩の研究、、色もすごく面白いですよね。もっと自分ももう少し色に対して知識を深めていかないとなと思っています。色は波長である以上メンタル面だけではなくフィジカルにも影響が大いにあるんではないかと勘ぐっているところです笑
      おっしゃられている研究も気になりますね。もしよろしければリンク等を貼っていただけるとすごく助かります。

      はい、また見ていってください!

  4. すごいですね…
    観測者が他の何かの干渉ということなのであれば、例えば人間がご神木やパワーストーンに触れることで健康になったり、特定の場所に行くだけで気分が悪くなる理由になりますね。
    実際には変化が小さすぎて誰も気づいていないかもしれないけれど、何かしらの変化が起こっているかもしれない。
    時間の概念も、時間軸があって僕らがそのレールに乗っているのではなく、僕らそれぞれ(というよりは物それぞれ)の時間がある…というか時間は観測しているから存在しているだけで、観測していないなら存在しない?観測が他の物質の干渉なら、本当にただ一つだけが存在する空間があるとしたなら、その物質は何の変化も起こさないから…時間が存在しないということ?

    想像すると本当に楽しいですね。

  5. 拝読させて頂きました。
    世界を構築する物質の量子態の中、過去現在未来のあらゆる情報が入ってて、観察によってデコヒーレンスが発生し人間の理解で「現在」に収束するって凄くよい話でした!

    時間を第四次元に捉え、三次元を平面に想像してその平面の変化をz軸にたって成り立つという説もあり、時間とは関係なくxyz以外に空間的にもう一つの座標軸を第四次元に捉える説もありますね。つまり人間が認識できるのは三次元空間+0.5(単向)次元時間ということです。例えば本物の四次元生物は、僕たちが平面の円環の中の物体を持ち上げて円環の外に持ち運べるように、人間にとって密閉の部屋に出られることができたり、二次元の生物にとって密閉の円環の中の物を上から見えるように箱、石、コンピュータの内部構造を直接見ることができるということです。
    とっちでも凄く興味深い話であり、自分も良く分からないが後者の方が納得できそうですw。
    ご意見をお聞かせ頂きたいです!

  6. 通りすがり

    時間を超越できる世界があるのかなと思えるよい記事でした。確かに、波動性は粒子にもどるまでに経過する時間を無視した性質のようにも見えますね。
    物質も量子から構成されているので、その性質の差が何に起因するかを考えてみるのは面白いかもしれません。

  7. 素晴らしい記事ありがとうございます^^

    一つ疑問が浮かびました。
    記事中に、
    「原子がその周囲と相互作用することによってデコヒーレンスが引き起こされる」
    とありますが、

    二重スリット実験のように、
    干渉縞が観測されるのはデコヒーレンスが起きていない(波の性質のまま)ことを示すと思いますが、
    なぜデコヒーレンスが起きないのでしょうか?

    スリットやスクリーンも原子で出来ているので、相互作用しそうに思えます(^-^;

    1. コメントありがとうございます。

      物自体は高次元の解釈だと思われますので量子的性質は同じだと思います。

  8. いままきまさみち

    過去、現在、未来を同時に見るには悟ることで可能ではあります。

    真理を探求する者です。

    高次元との接触を意識的に行い、最終的に無意識においても高次元だったとすることで時間を超越して存在する現象に干渉することに取り組んでます。

    過去世や未来世などは「ない」と扱い直すことで、カルマ(行為のループ)からの脱却が図れているのだとこの記事を見て頭の中を整理しております。

    観測者しない観測があるので、高次との接触とした認識は頷けました。

    この記事を読ませていただき、さらなる意識の自由を見えました。ありがとうございます。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*