地球の裏側でも瞬時に影響?”量子もつれ”

今回は量子力学の特性についての話です。

量子もつれ(Quantum Entanglement)と呼ばれる特性です。

 

 

 

量子力学について今まで何回か書いてきましたが、 今回書く“量子もつれ”は多分その中でも特に理解が困難です。

 

これについては物理学者の間でも未だに様々な議論が起こっています。

 

 

 

ちなみにこの記事は量子力学の世界にはこんなものがあるよという紹介のようなものです。

 

 

本格的に量子力学、そして量子もつれについて知りたい人はインターネットで勉強できるようなものではないので、物理学の専門書を読むことをオススメします。

 

 

この法則を本当に理解するのは学者でも今のところ無理なのですが(笑)、

ある程度数式が理解できる人であれば情報を探してみる価値があるかもしれません。(僕には難しすぎますが笑)

 

 

 

 

毎度のことではありますが、量子という特殊な世界では常識が通用しません

なのでこの記事でちんぷんかんぷんにならないためには、昔の記事を読んでいただけるといいかと思います。

 

知れば世界が変わる量子論って?

 

 




 

“量子もつれ”とは量子の持つ”切れない繋がり”

 

量子もつれを一言で簡単にいうと、 “一度繋がった量子はどんなに距離が離れても繋がりは切れない” という性質です。

 

 

 

古来から僕たちが認識している世界では、”繋がり”とは 物理的に接触していることでした。

 

 

物体と物体同士が離れていても、導線などで繋ぐことで電気エネルギーなどは通ります。

その為、その間に繋がりを保つことが可能だということは誰でも認識していることです。

 

 

 

現代ではインターネットなどの電波という周波数を用いることによって、 離れた人とコミュニーケーションを取ることができます。

 

 

また、赤外線などを用いて、物理的につながっていなくてもリモートで機械を動かすこともできます。

 

 

 

昔の人にとっては、

地球の反対側の人の顔を見ながらリアルタイムで会話できる

という現代のテクノロジーは理解不能でとても奇妙に見えるはずです。

 

 

 

このように僕たちが日常から経験している”繋がり”とは時代によってその規模や形を変えてきました。

 

 

 

量子の繋がりであるもつれについて考える時に、そのようなイメージを持たれると少し勘違いが生まれてしまうかもしれません。

 

量子の繋がりは上記の古典物理学上の繋がりとは根本的に違うからです

 

しかしもつれのイメージを掴むという限りではそのような認識からのスタートでも大丈夫だと思います。

 

 

量子の非局所性が引き起こす不思議な回転

 

まずはその異質な繋がりを説明するために量子の基本性質について理解する必要があります。

 

 

 

量子力学の基礎的な理論として、量子は“非局所性”という性質を持ちます。

 

 

つまり“一つの場所に、一つの形としては留まらない”ということです。

 

 

その非局所性は、観測という外からの干渉を受けることによって壊れ、

“局所性”を持つようになります。

 

これが“量子デコヒーレンス”と呼ばれるものです。

 

 

 

以前の記事で説明した、

“見られていないときはいろんな場所に存在し、見られた瞬間に一つの場所に留まる” というのがそれですね。

 

確認されていない、つまり非局所性を保っている間の量子は、形を持ちません

 

 

量子の形はよく粒子のようなイメージを待たれますが、あれは教科書上でわかりやすいように書かれているだけで、実際に粒子のような形をしているわけではないのです。

 

 

 

 

 

 

そして量子というものはスピンしています。

言葉通り回転しているということですが、これは量子を地球に例えると自転です。

 

 

原子核(太陽)の周りを公転しながら、電子(地球)がスピン(自転)している。

 

その太陽系のような構造が各原子内に存在すると思ってください。

 

 

しかしながら、このスピンというのも僕たちが日常から考える “バスケットボールがスピンする”ような回転とは全く違います

なぜなら上に書いた通りそもそも非局所性を持つ量子には形がありません。

 

 

形も無いのにボールのようにスピンができるはずませんよね。

 

 

ここも理解しづらいですが、僕たちが日頃見る世界とは常識が違うということで納得するしかありません。

 

 

 

 

この量子のスピンについてわかりづらいのはここからです。

 

 

量子というものは、非局所性を保つ時には違った動きを同時に行うことができます。

 

 

”量子の重ね合わせ”と呼ばれる性質です。

 

 

 

ボールとは違いますがわかりやすように、上に書いたバスケットボールの例を再び使います。

 

 

バスケットボール(量子)が指の上で回転しています。

 

 

目を閉じて誰もボールを見なくなると、ボールは重ね合わせ状態となり

右回転と左回転を同時に行うようになります。

 

そして目を開けてボールを見た時に量子デコヒーレンスが起こり、局所性を持つようになり、

右回転か左回転かのどちらかに決定されて一方向に回転するようになります。

 

 

そしてまた目を閉じると、非局所性を取り戻し、 二つの方向への回転を同時に始めるのです。

 

 

そのため量子の回転は360°の回転ではまだ一回転ではなく、

720°の回転でようやく一回転と受け取られます。

 

 

少し掴みにくいですが、これが量子の不思議な回転です。

 

 

“不気味な遠隔作用”

 

量子のスピンについて少しわかったところで、 いよいよここから量子もつれの話です。

 

 

 

量子のスピンを発見するきっかけとなったパウリの排他原理と呼ばれる定理があります。

 

 

そこから導き出される法則として、原子や分子の中に存在するうちの

二個の電子がペアを作って、 バランスを保つことによって原子や分子の形(化学結合)を一定に保っています。

 

 

前項に書いた通り、非局所性を保つ電子は重ね合わせ状態にあるので右回りと左回りのスピンを両方取ることができますが、

バランスを保つためには、ペアとなった電子がそれぞれ反対方向に回転している必要があります。

 

 

これを“スピン一重項状態”と呼びます。

 

 

 

それぞれの電子が重ね合わせで右と左に同時回転しているにも関わらず、

それぞれの電子が互いに反対方向に回転している。

 

ややこしい状態ですが、この状態がなけれが原子や分子の存在がおかしなことになってしまうんです。

 

 

 

 

ではこの一重項状態を保ちながら、その電子を観測するとどうなるか。

 

 

観測により電子は非局所性と重ね合わせ状態を失うため、

右か左のどちらか一方向に回転し始めます。

 

 

パウリの排他原則により、

片方の電子が右回転であれば、もう片方は左回転。

片方が左回転であれば、もう片方は右回転

になります。

 

 

 

この結果片方の電子を観測して動きを決定すると、

そのもう片方の電子の動きもわざわざ観測しなくとも勝手に決定されてしまいます。

 

 

 

 

再びバスケットボールで例をあげます。(元バスケ部なのですみません笑)

 

バスケ部のA君とB君がペアで一重項状態となったバスケットボール(電子)を指の上で回転させています。

 

 

二人とも目を閉じでボールを見ていないのでそのボールは重ね合わせ状態で右回転と左回転を同時に回転していますが、 それでもそれぞれのボールは互いに反対方向に回転しています。

 

その状態でB君が体育倉庫の裏に隠れてしまい、お互いが見えない状態になりました。

 

ここでA君だけが目を開けてボールを見ます。B君は目を閉じたままです。

 

重ね合わせを失ったA君のボールは左回転でした。

そうなると自動的にB君のボールも重ね合わせを失い、右回転に決定されます。

たとえB君がボールを見ていなくても一重項状態を保っている以上それは決定的なんです。

 

 

A君が目を閉じると、再び重ね合わせの状態に戻ります。

今度はB君が目を開けました。

 

するとB君のボールは今度は左回転に回っています。

そうなるとA君のボールも自動的にさっきとは逆の右回転に収束します。

 

 

 

確認されるまではさまざな違った動きをしているが、

確認された瞬間にある一つの動きが確定し、元からそうしてたかのように振る舞うのが量子の特性です。

 

そしてある量子の動きが確定するということは、

その他の繋がりを持った他の量子にも瞬時に影響し、確定させてしまうのです。

 

 

 

 

何よりも奇妙なのが、 この不思議な相互作用に距離は関係ないということです。

 

例えばB君が体育倉庫ではなく、

地球の裏側にいようが、

火星にいようが、

1000光年先にある惑星にいようが、

関係ありません。瞬時に影響します。

 

 

これこそが量子のもつ奇妙な特性、“量子もつれ”です。

 

 

 

ここで少し疑問が出てきます。

アインシュタインの特殊相対性理論との矛盾です。

 

物質が早く動くと、光速に近づくにつれて質量が無限大に近くなってしまうため

原則的に光は最速で、光速を超えることができないと考えられました。

 

 

1000光年先の星には、光の速度で到達するのに1000年かかります。

一億光年先の星には、光の速度でも一億年かかります。

 

 

それなのに量子もつれではそれを全て無視して瞬時に連絡し合うことになります。

文字通り、瞬時に、0秒で

 

そのため、アインシュタインはこの量子もつれを“不気味な遠隔作用”と呼び、

その生涯において量子論を認めることはありませんでした。

 

 

 

 

技術が発達した現在ではこの量子もつれを観測するための実験を

数式上ではなく機械を用いて物理的に行うことが可能になっています。

 

結果的に、量子もつれは本当に瞬時に、 0,000….0秒で影響しあっているということが実験で何度も確認されています。

 

 

まさしく奇妙な遠隔作用には他なりませんが、それでもそれらは現実に存在しており、

 

今この瞬間でもその奇妙な量子の性質のおかげで、僕たちの身体や、目にする物体の全てが形作られているということは理解しておかなければなりません。

 

 

 

終わりに

 

長くなってしまいました笑

 

 

量子もつれは量子力学の中でもトップクラスの奇妙さを持っています。

 

それと同時に量子力学について考える楽しさを与えてくれるものです。

(19世紀末の物理学者にとっては、”悩みの種”だったようですが)

 

 

 

この量子もつれを利用して量子コンピュータや、量子テレポーテーションなど

 

新技術の卵がたくさん生まれてきています。

 

 

 

僕が量子もつれに興味を持つのも、

鍼灸治療やその他の医療にも当たり前に関わってくると考えているからに他なりません。

 

 

まぁその話はまた次の機会にゆっくりと。

 

 

量子の奇妙な性質を少しでも知っていだだけたなら幸いです。

 

 

 

質問や、補足の説明、意見、感想などありましたら教えてください。

 

次の記事に反映させますので。

 

; )







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「地球の裏側でも瞬時に影響?”量子もつれ”」への4件のフィードバック

  1. 量子もつれが鍼灸治療や他の医療に具体的にどのように関わってくるとお考えでしょうか?1人の患者を治せば遠隔地の患者も瞬時に治せるとか。

  2. やさしく説明頂いているのは分かるのですが、「目を開ける/閉じる」「見る/見ない」と言うのは まるで人間の知覚が結果に作用する誤解を生みそうで、説明としては不適切ではないでしょうか?
    観測の為「電磁波をあてる」とかにすべきと思います。
    それとも本当に人間が(猿でも?)知覚する事が影響するのですか?
    ご教示よろしくお願い致します。

    1. コメントありがとうございます。返事が遅くなりまして申し訳ございません。
      ご指摘の通り、観測は知覚や意識などの影響ではなく原子の相互作用によるものですので正確には見る・見ないという言い方は的確ではございません。

      一方で数多くの書籍(主に一般書)では、観測者効果については、さも見る・見ないなどといった認識によって引き起こされるという様な書き方で説明されていることが多いです。これは元々、量子が何を持ってして”観測”されるか長い間議論に挙がっていたことによるものと、初歩的な理解を深めたい段階ではその方が説明しやすいということが理由になっているのではと考えられます。

      正確には観測の為に知覚は影響しませんが、わかりやすく説明する例として上記のような記載をさせていただきました。認識にずれがございましたらご指摘いただけますと幸いです。
      コメントありがとうございました!

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