日本の鍼灸師はもっと海外を見るべきだと思う話

 

ここ最近はずっと旅の報告について話してきたので、久々に鍼灸の話です

 

このブログを見てくれている人には鍼灸師で、海外に興味を持って調べていて辿り着いた方もいるかもしれません。

 

今回はちょっと関連して、鍼灸師はもっと海外にもっと興味を持とうという話です。

 

 

 

ひとえに鍼灸師と言ってももちろん人によって全く違います。

むしろこのブログに来ている人は海外をすでに視野に入れている人が多いかもしれません。

 

しかし、これは鍼灸師だけでなく日本人全般にも言えることですが、海外の状況に興味のない人が多すぎると思います。

特に鍼灸師を取り巻く日本の今の状況は間違いなくいい環境ではないにも関わらず、海外進出という選択肢を考えてもいないということがほとんどです。

 

 

僕個人としては鍼灸師として海外に出ることはメリットだらけだと思うので、これを読んでこれから少しでも興味を持ってくれればいいなぁなんて思っています


鍼灸師を取り巻く日本の現状

 

中国から起こり、朝鮮などを伝って、島国・日本まで伝わって発展してきた鍼灸ですが、

2017年の今日、鍼灸は世界中にあります。

 

 

古くから鍼灸が大きく発展した国の一つである日本ですが、

今の鍼灸師を取り巻く状況はお世辞にもいいとは言えません。

 

鍼灸院の競争率の増加や、ブラック企業の数、国民の受診率の低さ、保険制度や平均年収の低さ、鍼灸師全体の技術の問題、、

 

挙げるとキリがないほど問題ありです。

 

 

先ほど述べた通り、鍼灸は世界中にあります。

その中でも日本は鍼灸師にとって生きて行きづらい国だという事には

僕個人としては疑いようがないと思います。

 

 

 

気が重いですが、鍼灸師の現状を軽く確認してみましょう。

 

 

上にあげた通り今の鍼灸師を取り巻く環境の一つとして、

鍼灸師の数の増加があります。

 

毎年増え続ける供給の一方で、

患者の数や受診率はそう伸びていません。

 

このまま鍼灸師の数が増え続けると、

鍼灸師は受診率3%という限られた患者数の中、患者をさらに取り合うようになって行きます。

 

 

「今が3%の受診率なら、頑張って受診率を上げていける!」

と思うかもしれません。

 

確かにそれだけ鍼灸を受けたことがない人が世の中にいるならまだそれだけ伸び代があるということは間違いない事実です。

 

 

しかしそこで問題のなるのが、鍼灸師の技術(知識)の問題

僕もまだまだ若いペーペー鍼灸師なので偉そうなことは言うつもりはありません。

 

でも例えば鍼灸の専門学校を出て国試に通ったとしても、

ほとんどの鍼灸師がそれだけで患者を治せるようにはなりません。

 

さらに国試で出る問題や、学校で習うことのほとんどは現代医学に沿った内容なので、

学校の教えから現代医学に従順に従う鍼灸師が量産されます(僕もその一人でした)。

 

学校では東洋医学については鍼灸の基礎として軽く習う程度が多いですし、脈診や腹診の経験を授業から積むのも難しいところが殆どです。

 

なぜならそれを教える先生たちも経験を要する脈診や腹診をしっかりと教えられる人は限られているし、

張っている筋肉に鍼を刺す方法を教えるほうが授業としてはシンプルで手っ取り早いからです。

 

その結果、学校を出て臨床でいきなり東洋医学で勝負しようとする鍼灸師はかなりの少数派になります。

 

 

でもどんなに鍼灸師が頑張っても、現代医学のトップは医者ですし、それと同じ土俵に立ったところで大きな力に牽制されるだけです。

 

そもそも鍼灸の本当の力が現代医学にはないところなのに、東洋医学なくしてどうやってこの業界が成長していくんでしょうか。

 

 

 

そこで東洋医学を主力で臨床で使っていきたいと考えれば、ほぼ間違いなくどこかで勉強(修行)が必要になってくると思います。

 

なので技術をつけるには勉強会やセミナーに出ることが重要ですが、一番身に付くのは鍼灸院で働きながらそのクリニックで技術を得ることだと思います。

 

 

そうなった時に低い受診率の中、数少ない患者を取り合ってる鍼灸院の何パーセントが技術を惜しみなく教えてくれるでしょうか。

 

クリニックを持てば周りはすべてライバルで、生き残るためには自分の技術を隠す人も多々いると思います。

 

手を組んで業界を変えていかなくてはいけない鍼灸師が、周りを敵対視していてはこれからの業界を変えられるはずがありません。

 

知識や技術がある治療家が目先の利益独占のためにそれを隠すことで、自身で業界の失速を招いているということを理解しないといけません。

 

 

昔みたいに師の元に入って、弟子として教えを請うという日本の治療家のスタイルは滅びつつあります。

 

師を持つことが難しい今、東洋医学を一から経験で学んでいける環境はごく稀であり、

そのような環境から東洋医学をメインでやっていこうと考える鍼灸師の数が減るのも仕方ないです。

 

 

 

そうなってくると患者の鍼灸に対する理解にも関わってきます。

 

まず知っておくべき前提として、日本人の患者は現代医学を盲信してる人が殆どです。

 

そんな患者の前で、経絡が〜とか気が〜とか言えば、

変な宗教みたいな目で見られることは軽く予測できます。

 

しかし鍼灸の本当の強みは、内科系にも影響できるところなので、

鍼灸治療を本気で行いたければ、患者に鍼灸は身体の内側にも効くということをしっかりと説明していけなければなりません。

 

 

しかし東洋医学をしっかりと鍛錬できていない鍼灸師がそれを説明できるわけもありませんし、

患者に変な目で見られることを恐れて、現代医学を中心に話してしまえば最後まで患者は本当に鍼灸の効果の範囲について理解はできません。

 

だから日本人のほとんどが鍼は肩こりや腰痛とかにするものという間違った認識を持っているんです。

ただコリをほぐすなんて、そんなのはマッサージで十分です。

 

鍼灸の社会的地位を落としているのも残念ながら、鍼灸師自身なのかもしれません。

 

 

 

 

鍼灸師を取り巻く状況の負の連鎖を軽く話しましたが、

まだまだ他にも問題はあります。

 

この今の日本の鍼灸に対する状況を変えるには、一人一人の鍼灸師はどうすればいいでしょうか?

 

正直なところ僕にはわかりません。

 

国民の認識、鍼灸師の考え、国の法律、、

これらのどれから変えていけると思いますか?

 

 

今のままでは正直どんな奇跡が起こっても

この鍼灸師の状況が僕の生きているうちに好転することはないと思っています。

 



 

日本にこだわる理由は?

 

日本での鍼灸のやり辛さは上に書いた通りですし、

ほとんどの鍼灸師が先を危惧している日本のこの鍼灸界でなぜ日本にこだわる必要があるのでしょうか

 

 

 

日本で鍼灸をしたい理由はいろいろあると思います。

資格の問題、言語の問題、海外に興味がない、友達や家族がいる、日本が住みやすいから。。

それらの理由から日本から出たくないという人は多いかもしれません。

 

しかし一度取れば終身免許の日本では、いつでも帰ってくることができます。

 

海外にしばらく挑戦した後で日本に帰ってくるという選択肢があるにもかかわらず、

頑なに初めから日本にこだわるのは僕の中ではどうしても疑問に感じてしまいます。

 

 

金銭的な状況や周りの環境などから海外に出るのは無理なんだ

と思って諦められるのであればそれまでです。

 

 

でも若くて、これからまだまだ頑張れるという鍼灸師で海外に行ってみたいという人や興味がある人、

または日本の鍼灸界に疑問を持ち続けている人など、少なからずいるはずです。

 

 

人生一度きりです。

 

 

やらない理由を探すよりやる理由を考えて、そして全力で動けば海外進出は別段難しいものではないですし、

間違いなくリターンを見込める挑戦になると思います。

 

興味があっても日本に生まれたから日本でやるしかないと考えるのはもったいないです。

 

 

鍼灸は世界中にあると言いましたが、そのほとんどは中国鍼灸です。

 

しかし、痛みが少なく独自の発展を遂げた日本鍼灸が

今では海外で徐々に人気が出てきています。

 

中国、韓国、日本。

 

この三加国が鍼灸が長い歴史をかけて進化してきた中心の国です。

 

 

そしてその国々の中で、世界では圧倒的に日本からの鍼灸師が少ないです。

日本の伝統鍼灸を学んでいきたいという鍼灸師も多々存在します。

 

 

日本では供給過多でも、海外ではこれだけ需要があるのに日本にだけ留まっていたら需要を逃すだけです。

 

鍼さえあれば需要を追って身を移すことができるのも鍼灸の強みの一つだと僕は思っています。

 

 

 

長い歴史をかけて成長してきた伝統的な鍼灸が

たかだか200年程度の歴史の現代医学に尻尾を振り、

消えかけている日本。

 

そしてそれを助長する周りの環境。

 

温故知新をこれほどまでに無視している例も珍しいです。

 

それを僕たち鍼灸師がどう感じて、変えていこうとするか、、

 

この流れが早く変わらない限り、

日本鍼灸界は沈みゆく船であることに疑いはないと思っています。

 

 

さいごに

 

僕自身は日本の学校を卒業してすぐ海外に出たので、日本のクリニックで働いた経験はありません。

 

なので正確に測ることはできませんが、

それでも海外で鍼灸師として活動することになって本当に良かったと思っています。

 

海外の医療を知ったり、患者の考え方の違いを知ったり、

医療に対する認識を見直すことができたり、一度日本を離れることは治療家としてかなりの経験になると思います。

 

 

気の重い情報を色々と書きましたが、これを読んで少しでも海外に出てみようと思う人が増えてくれると嬉しいです。

 

 





この記事が気に入ったら
いいね!

「日本の鍼灸師はもっと海外を見るべきだと思う話」への5件のフィードバック

  1. 興味深かったです。

    私自身も分野は異なるものの日本での専門性に疑問を持ってこちらに来ました。
    私の友人も鍼灸師で海外に出てます。理由は少し異なりますが。

    夢はあってもなかなか飛び出す勇気がないのが多数派なのでしょうね。

    こちらでさらに技術が上がったり、役割が見いだせるといいですね。

    1. tomtomさん、コメントありがとうございます。
      鍼灸だけに限らず、日本の技術職は多くの分野で供給過多になりつつあります。なので海外進出を考えるということは様々な分野で必要になってくることだと思います。
      そうですね。どうしても尻込みしてしまうのであれば、もっと海外への敷居が低くなれば挑戦しやすくなると思うんですが。でもまずは言語がどうしても壁になりますね。
      tomtomさんのNZでのご活躍、応援しています。

  2. こんにちは。
    いろいろ調べていたらこちらのブログにたどり着きました。
    ここ何年か特にひどい頭痛の悩み続け、もし良ければ施術してほしいのです。
    もちろん色々なフィジオやカイロもハリも受けました、、でも根本的な治療にならないのです。。

    メールでお返事いただけると助かります。

  3. こんにちは。ブログ初めて拝見させていただきました。実は私は海外で中医学を学び(鍼、漢方)今年から日本の鍼免許を取得しようと日本の鍼の学校に入学しました。まだまだ日本の生活は始まったばかりですが、偶然このブログにたどり着き、まったく同じことを常々思っていたのでうれしくてコメントさせてもらいました。ご活躍応援しています。

    1. りんさん、こんにちは。返事が遅れてすみません!
      海外で中医学を学んだ後に日本の学校とは面白い流れですね。日本の東洋医学と海外の中医学では様々な違いがあるはずですのでそこも楽しめそうです。
      まだぜひ遊びに来てください。コメントありがとうございました!

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*