僕はニュージーランドで鍼灸をやっていますが、
日本国外では鍼灸ってどのような感じなんだろうと気になっている方も多いと思います。
少なくとも僕はそうでした
自分は今まで仕事で行ったことない国の鍼灸関連は詳しくはわかりません。
でも自分が行った国で鍼灸の経験をして、感じたことなら書けます。
なので今回はニュージーランドの鍼灸について。
NZの医療体制から鍼灸がどのような立ち位置か、
そしてその中でも日本鍼灸はどうかという事について話したいと思います。
ニュージーランドの医療関連を語るには、まず押さえていなければならないものがあります。
Accident Compensation Corporation,
略してACCという制度。
これは事故などニュージーランド国内で起こった怪我であれば
国が医療費を負担してくれるという制度です。
事故といっても交通事故などだけではなく、例えば、
- 友達と週末にラグビーをやってて激しくぶつかって首を痛めた。
- 庭の手入れをしていて草を引き抜いたら手首を痛めた。
- ビーチを散歩していたら大きめの石があってそれにつまずいて足首を挫いた。
- 子どもと遊んでいて腰を痛めた。
- DIY中にトンカチを足に落とした。
など様々な理由で、明らかな自己責任も全てバッチリカバーされます。
さらにすごいのが、その怪我がニュージーランドで起こったものである以上、誰にでも適応されるという点です。
つまり国民やこちらで働いている方はもちろん、
観光者やワーホリ中の人など、誰でも医療費のカバーを受けることができます。
僕がACCの恩施を受けたのは去年の8月くらい。
スケートボードで激しく転んだ時に、
病院に行って手当てを受けたり、指のレントゲンを撮ったりするのも全て無料ですごく助かりました。
それじゃニュージーに行く時保険はいらないじゃん!
と思うかもしれません。
ACCがある以上、僕みたいに基本病気などでは病院に行かないって人はそこまで医療保険に入らなくてもいいとは思います笑
しかし怪我ではなく風邪や腹痛などの病気では医療費はカバーされませんので、そこは理解しておく必要があります。
さてこのニュージー独特の制度のACC、
病院の治療だけでなく鍼灸治療も問題なく適応されます。
なので怪我をした場合、患者はクリニックによっては実質無料に近い出費で鍼灸治療を受けることができます。
NZでは鍼灸自体の認知度は高く、医師からの勧めで鍼灸に行くように言われてくる患者も多いです。
それにより鍼灸の受診率は日本のそれに比べると比じゃないレベルで高いと思います。
ニュージーランドのクリニックの形態ですが、
日本のような“〇〇鍼灸院”みたいに
鍼灸だけに絞ってやっているクリニックは実はあまり多くありません。
というのも、ACCを用いて治療を受けるにはACCナンバーという番号が必要になります。
しかしそのACCナンバーは鍼灸師が発行をお願いすることはできず、最初に医者や理学療法士などに診てもらう必要があります。
なので多くのクリニックで、鍼灸と理学療法士がセットとなって働いています。
僕のクリニックもフィジオ(理学療法士)と鍼灸師が協力しながら患者を診るといった感じです。
個人経営の小さめなクリニックではフィジオと鍼灸を両方自分でやる治療家も多いです。
日本の感覚でいうと柔整と鍼灸を両方やる治療家に近いですね。
上で話した通り、ACCで保障されるのは怪我などのみになります。
なので内科系の治療をメインに行う場合には、ACCは使えずプライベートでの診療となります。
その際には国からの保障は出ず、患者の自己負担となります。
それでもあえてACCを使わずプライベートでのみ治療をするといった治療家も、多くないですがいます。
プライベートでは完全自己負担ですが、外傷がなくとも内科系の治療が思い切り出来ます。
日本では鍼灸は腰や肩の痛みなどに良いととらえられていることが多く、針を使ったマッサージの様な扱いをされることが多々ありますが、
NZでは鍼灸は内科系の問題に効果的だということが患者からも高く認知されており、プライベートでも人気は高いです。
ひとえに鍼灸と言っても様々な鍼灸があります。
現代医学の考えに基づいて鍼を打つドライニードリングもありますが、
NZでは基本がTCMで中医学の考え方に基づいた鍼灸師の方がほとんどです。
もちろん中華系が多いということもありますが、
ニュージーでの鍼灸学校は数が多くなく、その全てががっつりTCMを中心に教えているので、
卒業後に特別に日本鍼灸などを個別で学んだ方以外はほとんどがTCMです。
後は韓国人が多いので、韓医学に基づいた韓国鍼灸も以外と多いです。
鍼灸が大きく栄えた日、中、韓。
その中では、日本鍼灸の数は圧倒的に少ないです。
ニュージーランド全体で日本式の鍼灸をしている方は何人か知っていますが、今の所両手で数えられる程度の人数だと思います。
NZでは日本鍼灸という分野が若い以上、
今は患者からの信頼を得ることが大事になってきます。
結構オーストラリアには日本式の鍼灸をしている方が多いので、
オーストラリアで日本鍼灸を経験して気に入った方が、今のクリニックに来てくれるということもよくあります。
なのでニュージーランドでも少しずつ日本式の鍼灸が認知されていけばいいなと思っています。
以上、このような国の体制から鍼灸自体の需要は比較的高いと思います。
ちょっと前の記事ですが、ニュージーランドで鍼灸の成長を示唆する記事も書かれています。
リンク→Acupuncture is big business in NZ
この環境の中でもっと日本鍼灸も増えてきたらいいなぁと
しみじみ思います。
とりあえず今は真摯に取り組むのみ、ですね
初めまして、こんにちは。ブログを読ませてもらいました。とても楽しそうで、うらやましいです。私も代替医療をにとても興味があります。そして、そのような仕事に付きたいと思っていて、今、ドイツのハイルプラクティカーになりたいと思い、ドイツ語の勉強をしていました。しかし、kokiさんのブログを読んでいたら、鍼灸の専門学校を出ていても、学士が貰える制度があるがわかって、とても驚きました。本当はアメリカの自然療法医になりたかったのですが、語学、学費、大学院など言う大きな壁があり、ハイルプラクティカーにしたのですが、学校を卒業しても現地の国の人が優先なので、就職visaが下りるのも分からないし、少し心配になっています。そして今、鍼灸の学校に行って学士を取ってからの方がいいのではなどと思っています。そしたら将来、選択肢が増えると思いますし、アメリカの自然療法大学院も受けられますし、将来の幅が広がると思っています。kokiさんの経験上やはり学士は取っておいた方がよろしいでしょうか?またハイルプラクティカーの専門学校を出て、学位授与機構は使えますか?
ヌーボーさん、コメントありがとうございます。
ハイルプラクティカーいいですよね。実は僕も少し興味があります。笑
質問に対してですが、将来にどこでどのような治療をしたいかで選択は変わってくると思います。
話によると言語、金銭的面からハイルプラクティカーを考えているということですが、確実にドイツで鍼灸、もしくは他の代替医療をやりたいというのでなければハイルプラクティカーが必要かどうかは疑問です。なぜかというとドイツ特有の資格であるため、もし他の国を考えた際や日本に帰ろうとなった時に、全くと言っていいほど意味を成しません。なのでいずれにしろその国でまた鍼灸資格を取りなおさなければなりません。ドイツというのが確定していない以上、鍼灸などといった一つの資格に絞り取得された方が将来的には動きやすいと思います。
ハイルプラクティカーはドイツで医師免許と並ぶ資格なので難易度は日本の鍼灸国家試験などとは比にならない上、ドイツ語というハンデを背負ってその試験をパスするのはかなりの覚悟が必要となるかと思います。
僕個人の見解として、”基礎は母国語で習う”ということはとても重要だと思っています。何故ならまだ慣れてない言語で何かを勉強しようとすると、最初に一度意味を理解するために頭を使わないといけないため、内容自体を考える時間がどうしても減ってしまいます。もちろん語学力のレベルにもよりますが、”現地で何とか意思疎通ができる”といった程度では、母国語の時とは雲泥の差になると思います。現地に暮らし、友達を作って、授業を重ねていけば慣れてくるかもしれませんが、いずれにしろ学校の1年目は非常に大事です。解剖学や生理学などといった基礎を始めに習うので、そこをよく理解しておかないとその後の発展した分野についていけなくなりかねません。
もしも今、将来腰を据える国が定まっていなかったり、将来日本に帰ることがあると思っているのであれば日本の学校に行った方が問題はないと思います。おっしゃる通り、学士を取ればアメリカの大学院のへの進学ももちろんできます。また、どうしてもドイツでやりたいと思い直した時にでも、学校に通うといった規定もないので、独学ででもハイルプラクティカーになるための勉強をすればいいと思います。そっちの方がVisaの問題などで行き詰まった時でもどうにかなります。
日本の学校はピンキリなので、学校選びさえ間違えなければいい財産になると思います。
ハイルプラクティカーでは学授与機構は利用できません。学位授与機構は専門的な基礎資格を持っている方(鍼灸師、看護師など)にその専門の学位を与えるものです。
ハイルプラクティカーというのは一つの専門ではなく、”様々な代替医療で治療する治療家”を総合した資格です。
長々となってしまって申し訳ないです笑
僕の意見をいろいろと書きましたが、別にどれが正解というのはないです。ヌーボーさんが自分でこれが正しいと思うことを信じて行けば、たとえ計画がうまくいかなくても何かしら得ることができます。
なのでちょっと難しいと思うことでもどんどんチャレンジしてみてください!応援しています!
ご返事ありがとうございます。貴重なご意見ありがとうございます。確かにまだ、ここの国に住みたいみたいなのはありませんし、日本に帰って来るかも知れません。だからやはり学士は取った方がいいのでは…と思いました。私は鍼灸とか気功にも興味があるのですが、私が興味がある代替医療は、栄養療法と言う代替医療に興味があります。これは、血液検査などで足りてない栄養をサプリメント・食事などで補って体の調子を整よう?みたいな代替医療なのですが、とても奥が深いのです。私は高校生の時に精神病になってしまったのですが、この代替医療で治りました。ただサプリメントを飲むだけ、食事を改善しても、良くならない人がほとんどで、私もサプリメント・食事を変えても全く良くならなかったです。何故その栄養素が不足しているのか?原因を探して対処していくのですが、これが勉強するたびに、とても面白くお仕事にしたいなと、思いました。日本だとやはり医者以外に診断、治療はやってはいけないみたいで(当たり前ですが…)かといって西洋医学(薬物療法)などは余り興味がわきませんでした。そこで色々調べたのですが、ドイツのハイルプラクティカーかアメリカの自然療法医だったのですが…と言う感じです。鍼灸の専門学校でも学士が取れる事を教えて下さり、ありがとうございます。もう少し考えてみます。
ヌーボーさん、
なるほど。アメリカで自然療法医と言っていたのでメインでやりたいのは鍼灸じゃないのかもと思っていましたが栄養療法に興味があったんですね。
前回の僕のコメントは基本的に鍼灸のことに関してです。栄養療法などの話になるといろいろと変わってくると思います。
僕は専門が鍼灸なので栄養療法にはあまり詳しくはありませんが、まず言えるのは日本の代替医療の制度は他の先進国に比べてかなり遅れていると思います。ヨーロッパやアメリカ、そしてニュージーランドでも今はどんどん現代医学を見直し、より自然に近く人体に優しい代替医療の発展を進めていっていますが、日本では未だに健康管理はほとんど現代医学の病院一本です。残念ながら時代に逆行しているのが現状です。東洋医学に最も詳しいはずの鍼灸師が漢方薬ができず、薬剤師にならないと処方できないという点でも国の制度がしっかりと自然療法のことを考えていないのが明確です。
なので自然療法を学びたければ、おっしゃる通りハイルプラクティカーや自然療法医はいい選択ではないでしょうか。その足がけとして鍼灸師を考えるのもいいと思います。間違いなく海外では大きな武器にはなります。
誤解を招くようですが、日本が代替医療の面で遅れているのは法律面であって、日本の伝統医療の質は優れているものが多いです。
たとえば日本伝統の食養法などはかなり面白いですし鍼灸との相性もいいです。ただその長い歴史をかけた古い伝統医学が国の体制により今は消えかけています。学校で習えることでもないので難しいかもしれませんがどこかでそれを勉強できれば日本国内でもかなりいい勉強ができると思いますよ。
やりたいことをやるために道をいろいろ考える時間って大変ですが楽しいですよね。頑張って下さい!