鍼灸で傷の治りが早くなる?皮膚のイオンを利用しよう

以前から書いている通り、僕は鍼灸をする時に間中式の方法を頻繁に用います。

 

間中式の特徴としてイオンパンピングコードや、EAなどで電子やイオンを動かすというものがありますが、それはうまく利用すれば他の様々なことにも用いることができます。

その一つが傷口の回復力を高めるScar Tratmentです。

 

鍼で傷が治るの?と意外に思われるかもしれませんが、鍼は傷口の回復を促すのに大きな効果を示します。

それを考えるために重要なのはイオンが皮膚に及ぼす影響です。

 

 

皮膚の機能を考えるにあたって非常に参考になるのが傳田光洋博士が執筆された”皮膚は考える”という本です。

100ページ程度の読みやすい本ですが、鍼灸師であればぜひ手にとっていただきたいです。

 

また間中式で使うiPCやEAについては以前書いた記事を見て頂けるとわかりやすいと思います。

電子を動かすiPCとEA



皮膚の表面電位が傷の治りを左右する

人間の皮膚には体が傷つけられた時に自己再生する機能が備わっています。

 

当然ですがその傷の再生とは皮膚以外にも様々なプロセスが重なり合ってできています。

しかし外部からの損傷というスタートから表皮の回復というゴールは、いずれも体を包み込んで体内を守っている皮膚になります。よって皮膚がこのプロセスの司令塔となっていると考えることは不自然ではありません。

そしてそれらの皮膚の機能を支えるために、なくてはならないのが皮膚が持つ電位です。

 

19世紀の頃から体内に対して皮膚表面がマイナスに帯電していると知られており、今日では皮膚に電位が生じていることは周知の事実です。

どのようにその電位を調節しているかもわかっています。用いられるのはナトリウムチャネルなどのイオンパンプと呼ばれる構造です。

解剖・生理の知識のある方なら分かる通り、イオンパンプにはATPが必要です。エネルギー源であるATPをわざわざ用いてイオンパンプを動かし、イオンの層を作っているのにはそれ相応の理由があるはずです。

 

 

前述した傳田光洋氏の研究で、イオンパンプが正常に作動している皮膚では表皮の深さによってイオンの偏在が起きていると判明しました。

正常な皮膚ではカルシウムイオンが角層直下に高く集まっている一方で、アトピー性皮膚炎や乾癬などの皮膚疾患を持つ患者の皮膚ではカルシウムイオンが平坦に散らばっていた様です。

また加齢に伴い皮膚の回復が遅くなるのを考慮して調べた結果、高齢者の表皮内でもそのカルシウムイオンの平坦化が確認できました。

 

その結果から、イオンポンプの働きが十分でないとイオンの偏在性を維持できずに傷の回復は遅くなるという結果に至ったのです。

 

 

皮膚表面に電位差が生じるのはイオンの偏在が起きているためです。

よってイオンポンプが働かなくなるとイオンの偏在も消失し、皮膚の電位も生じづらくなります。実際に傷を受けた時には皮膚のマイナス帯電が消失しており、傷が治ると再び電位が回復していることも確認されました。

逆に捉えれば外部からマイナスの電場を負荷すれば皮膚の回復速度は高まるのではと考えることができます。そして実際にマイナスの電場をかけると回復速度は高まり、プラスをかけると回復速度は遅くなったのです。

 

これが表皮電位が皮膚に及ぼす影響です。

ここに働きかけることで傷の回復を高めることは理論的に可能になるのです。

 

戦時中に活躍した火傷への治療

上記の通り、イオンを動かすiPCやEAを用いることで怪我でもそうですが、火傷の治療にも多大な効果を発揮します。

 

間中善雄先生は第二次世界大戦中、沖縄で医師として活動していまいした。

その際に間中先生は、実際に鎖や銅線などを用いてイオンを動かし、怪我をした兵隊の火傷への治療などを行なっていました。これらの鎖や銅線が発展して後のiPC、イオンパンピングコードになります。

まだ皮膚について生理学的な研究が現代ほど盛んではない上、医師会から煙たがられていた鍼灸で、その様な独自な観点で治療法を生み出していたことはまさに”天才”の成せる技でしょう。

 

傷や火傷は当然ですが、皮膚の表面にできるものです。

火傷ができた時には皮膚の細胞が破壊され、細胞膜から溢れ出てきたイオンによって皮膚の電位がグチャグチャな状態になっています。

まさしくイオンの偏在が消えている状態です。

 

電位を整えてやるには、皮膚上にマイナス電位の膜を作ってあげる必要があります。

それをどうするか考えた末に、間中先生はアルミでできたフォイルを活用することにしました。

アルミは金属なので電位を纏うことができる上に、比較的安価で入手もしやすいです。

 

しかし間中先生がそれを考えついた時には手元にアルミフォイルがありませんでした。

そこで代用したのが板チョコを包んでいたアルミです。

 

それ以降、間中先生が火傷の治療を始める時には学生に板チョコを入手させて治療していた様です。

彼の火傷に対する治療はその結果、”チョコレート治療”という呼び名でも有名になった様です。

 

間中先生らしいジョークの飛んだ愛嬌のある名前です笑

しかしこの可愛らしい名前に反し、その効果は絶大で未だに間中式を知る治療家には頻繁に用いられる方法です。



鍼灸の適応領域は曖昧です。全ての患者がそれに戸惑っています。

でもそれは当然です。

専門家である僕たち鍼灸師ですら完全に理解できていないので、患者も混乱して当たり前です。

 

しかし傷や火傷の治療を鍼灸でできるというと多くの患者が驚きの声をあげます。

治療をしている場所が海外であるため日本人の患者については強く言えませんが、感触としては傷への治療はここニュージーランドの患者からは絶賛される治療法の一つです。

 

当然ながら最初は傷を鍼灸でどうやって治すの?という姿勢の患者に納得してもらうためには、メカニズムをある程度わかりやすく説明することが必須です。

そのためにもこの様な皮膚の細かい機能についても理解しておく必要があると考えています。

 

 

このScar treatmentは大したもので、あまり深い傷だと話は変わってきますが、擦りむいた様な傷火傷であればすぐに効果を感じることができます。

 

科学と鍼灸の両方に詳しい方であれば、ここまで書けばある程度どの様な感じの治療法になるか想像はつくかもしれません。

細かい方法について理解するには、まずはiPCの使い方を知る必要があります。それについても徐々に記事にまとめていきたいと思います。

 

そしてまだ僕もより効果を上げるために情報を集めながら色々と実験を試しているところなので、それについても後日まとめたいと思います!

 

参考:

傳田光洋「皮膚は考える」 岩波科学ライブラリー.

東洋療法学校協会 「生理学 第2版」医歯薬出版株式会社.

Yoshio Manaka, Stephen Birch, Kazuko Itaya 『Chasing the Dragon’s Tail』 Paradigm Publications.






この記事が気に入ったら
いいね!

コメントを残す

*